2001年3月29日(Thu)CHEE'S at ON AIR WEST


LIVEれぽ!「VECTOR」


ガールズバンドCHEE'S(当初はchee's)として正式デビューしたのは、昨年3月15日の出来事であった。筆者が初めて生のCHEE'Sを観たのもほぼ同時期である。 そのキッカケは最早語るべくも無い・・・チェキッ娘のファンであったからだ。
そのCHEE'Sをひと目観る為、この一年間は随分現場周りをした。
都内はもとより三重、名古屋、年末には大阪へも遠征。 各々の会場やネット上において、多くの同じ志を持つ友人にめぐり合う事も出来た。そんな一年間の総括を含めつつ、昨夜の出来事を振り返ろうと思っている。

ここ数ヶ月は対バン有りのスタイルが多かったが、今回はソロライブである。
会場は渋谷ON AIR WEST 今更説明の必要が無い位メジャーなハコだ。
集まったオーディエンスの数は約400名。本来のキャパが260名程度なので客席の様相は察しがつくであろう普段どちらかと言えば後方に陣取って、知人に講釈を語る事が多い筆者だが、今回は敢えてステージ前方、いわゆる「カブリツキ」ゾーンに身を置いた。
理屈でライブを愉しむのではなく、カラダで感じてみたかったのだ・・・。
楽曲ごとのコメントについてはご容赦願いたい。とてもではないが一曲々々を微細に記憶しておける状況には無かったのだ。 その代わりと言う訳でも無いのだが、メンバー個々をフューチャーして所感を述べて行きたいと思う。

新井利佳
前々からの課題であったヴォーカルが随分良くなっていた。
自分の歌い易い楽曲をセレクト出来る様になったのが顛末かとも思うが・・・。
己を理解するのも実力のうちであるし、事実としては声が通る様になっていた。
ヴォイトレにはかなりの時間を割いたと推察する。
リズムが大事なベースだが、しっかりしたビートを刻めていたのではないだろうか?
以前のライブでは終始仏頂面で、一部のファンから批判を受けていたが、今回に関しては笑顔が多く見られ好感が持てた。
最後に全くの老婆心であるが、少し痩せ過ぎではないだろうか?

藤岡麻美
このコはどこまでドラム道を突き詰められるのであろうか?
ドラムに向かった時のその眼差しは、正にプロのそれである。
スティック、キックとも一打一鳴に力強さが感じられ、全く以って安心して聴いていられる。
時に興奮のあまりリズムが飛ぶのか、走ってしまう瞬間もあるが、総じてシッカリ自分の仕事をこなしている様に思えた。
これは筆者の偏見かもしれないが、麻美推しを公言するファンの中には、熱病の如くのめり込む輩が特に多い気がする。そんな彼女を見ていたら理由が判った気がした。
ファンに対する目線の使い方、表情が誘惑的なのだ。
「小悪魔」と云うのは俗っぽくてイヤだが、彼女からはファンを惑わすビームが絶えず放出している様に思える、決して作為的ではなく。

上田愛美
細かなミスがあっても、すべて許せてしまうのはこのコならではの特権。
往年のアイドル風衣装をまとって「思い出の九十九里浜」を歌ってしまうのも まぁイイでしょう。 余興の範囲ですから・・・
彼女の本心が何処を向いているのか・・・残念ながら筆者には理解できない。
真剣なのか、それ程でも無いのか。。。それすら見えて来ない。
「オンナは天性の役者」誰から聞いた台詞か覚えていないが、この言葉を彼女にそのまま捧げたいと思う。
ライブなのだから彼女から少しは汗臭い感じが出て来ても良い気はしないだろうか?
まぁ、一生懸命の押し売りをされる方がより見苦しいが・・・。

篠原由美子
ストリートでの演奏経験から来るモノなのだろうか?
この16歳は予想以上にエンターティナーであると感じた。
ギターを弾くその表情や目線、リズムの取り方、歌唱方など、魅せる演奏という意味においては他のメンバー以上の仕上がりに見える。
見かけに反しての蒼い歌声は、音程もシッカリとして好感が持てる。
路上時代には、年配のファンが多かったのでは?なんて勝手に推察をしてみた。
肝心なギターのテクであるが、筆者程度の素人を聴き込ませるには十分以上の出来。この辺りは各位の意見を賜りたい処である。

音楽技術面でこのライブを締めるとすれば、及第点は確保したのではないだろうか?
「スナップショット」を息咳きって演奏していた一年前から比べれば隔世の感である。
これなら初めてCHEE'Sの演奏を耳にした人でも、ダメを出される事は無いのでは。
筆者としても、最早演奏にクレームをつける気は更々ない。

さて、昨夜のライブを楽しめたのかと問われたならば・・・

「楽しくはなかった」これが正直な今の心情である。

ひとつの大きな理由に楽曲の選択がある。
彼女達はデビュー時からガールポップ調の音楽を演って来た。
セルフコンポーズ曲しかり、カバー曲しかり。
その集大成が7月のライブで発表した「I LOVE GIRL POP」であった。
その他にも「Let's go chee's」「joying the happiest」等の逸曲が誕生した。
何れも字余りな歌詞や垢抜けないメロディー。不恰好な楽曲ではあるが、等身大の 彼女達の姿がそこには見えていた。
ガールポップというジャンルに真摯に向かい合った彼女達の音楽に心底惚れこんでいたし、何よりGPサイトを管理する者としては、誇りにさえ思えていた。
しかし、ここ数ヶ月の演目を見るとポリシーが見えない。
「トモダチ」で見せたパンキッシュな一面もどうやら決定打では無いようだ。
確かに今は試行錯誤をすべき時期なのだろうが、そこにファンの思いは反映されていないのではないだろうか?
敢えて断定をしてしまうが、昨夜のオーディエンスの過半数は「学園祭」や「ガラゲ」といった演目を欲していたと思う。
昨夜セレクトした楽曲のオリジナルはどれも秀曲であり、それ自体を否定する気は毛頭無い。
ナイのだが・・・観客と出演者のマインドに温度差は無かっただろうか?

話は多少横道にそれる。
今の筆者の一推しは紛れも無く「breath/松本江里子」に移行している。
先日のライブにて見事に射落とされてしまった。
その理由は彼女のルックスでも技術でもなく、ひたむきな心と楽曲である。
詳細はbreathのレポートをご覧頂きたいのだが、僅か30分のライブに込められた彼女の想いは十二分に伝わった。
楽曲に関して云えば今はイクシードのフルコピーであるが、今後には期待が持てる。

残念乍ら、今のCHEE'Sが目指すベクトルと筆者の嗜好がズレてしまったのである。
若いCHEE'Sファンの諸氏は、音楽的理由だけでファンになった訳ではなく、多分にルックスを含む彼女達のパーソナリティに惚れ込んでいると理解している。 しかし筆者のような年長者になると、アイドルと言えども偶像とは思えなくなるのだ。
CHEE'Sにしてもチェキッ娘にしても、彼女達が持つ楽曲が自分の趣味がマッチしたからこそファンになったのである。
その大事な楽曲の嗜好がズレてしまったと言う事は・・・。

長々おつきあい頂きありがとうございました。
思いのままを綴った為に生じた文脈の乱れ等、ご容赦賜りたくお願い致します。
ご意見、ご感想たまわれたら幸甚に存じます。
2001.3.30 文責 tempest@